椿山課長の七日間 (朝日文庫) [PR]

浅田 次郎
レーベル: 朝日新聞社
文庫
発売日: 2005年9月15日(木)
画像: 大 中

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   激務がたたり脳溢血で突然死したデパートの中年課長が、たった7日間の期限つきで現世に舞い戻ってくる。ただしみずからの正体を明かすことは許されず、39歳の独身美女の姿を借りているため、行く先々で珍騒動が巻き起こる。家族に、仕事に、やり残したことをやり遂げ、主人公は無事成仏できるのか。行動をともにするやくざの組長と小学生のストーリーをからめつつ描かれる、ハートウォーミングな「死者の自分探し」の物語である。

   もともと新聞連載小説だけに、随所に泣き笑いのつぼが設定されており、著者独特の歯切れのいい文体ともあいまってたちまち引き込まれる。脇役の一人ひとりまで丁寧にキャラクター設定された「優しい人」「いい人」たちによるファンタジーは、まさに浅田節の真骨頂だ。おまけに中年の純情恋愛までが織り込まれ、山あり谷ありで読者を飽きさせない。やや意外なラストシーンはほろ苦くも温かい味わいを残す。

   美しい女性の肢体をわがものにした主人公の行動のおかしみ、間抜けな死に方をしたやくざのべらんめえ口調の説教節など、著者ならではのディテール描写、懐かしくも美しい日本語の世界などは、本筋をはなれても楽しめる。死をめぐり、家族間、世代間で感想を述べ合うきっかけとしても好適のエンターテイメントといえよう。(松田尚之)


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